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今回読んだ本はポール・ダフ著『成功する子 失敗する子』です。
心理・経済学の最新の研究を踏まえつつ、アメリカの貧困家庭出身の子どもを対象とした教育支援プログラムを取材して見えてきた「達成できる子」の特徴について書かれています。話があちこちに飛ぶので難しい本ですが、理解してくると新しい発見で満ちている本です。
著者について
著者はポール・タフさんで編集者・記者を経てフリーのジャーナリストの方です。子どもの貧困と教育政策を専門に多数の執筆・講演活動を行っています。
成功には「知能至上主義」だけではなく「非認知スキル」も必要
「将来成功する子どもになってほしい」。そう願うのは親として当たり前ですよね。では、どのような教育をすれば良いのかな、と考えたときに、従来、そして現代においても、「知能を向上させる」ことを目的とした教育を行うのが一般的だと思います。
学校教育の現場でも、家庭や塾で勉強を補うときも、子どもの教育というと知識を詰め込むことが主です。
ですが、【成功する子】に必要なのは本当に「学力」や「知能」なのか?というのが本書の問いです。筆者は記者として、様々な教育現場を取材し、心理学や経済学などの最新の学問的知見を用いて教育者と意見交換する中で、成功に導くのはどんなスキルなのかを明らかにしようとしています。
ただし、タイトルの『成功する子 失敗する子』は少々ミスリーディングかもしれません。本書はアメリカの貧困家庭-貧しく、代々10代のうちに子どもを授かり、ドラッグにも手を出してしまうような家庭-の子どもがどのような教育を受ければ貧困から抜け出すことができるか、に焦点を当てています。実際の成功者や失敗した人の人生を追ったものではない点に注意が必要です。
貧困家庭における成功とは何か。それは大学に入ること、大学を中退せずに卒業することです。大卒者の方がよりよい生活水準を手にすることができ、貧困のループから抜け出せる確率も上がります。
筆者はアメリカの貧困家庭出身の学生向け支援について取材しています。学生の学力を上げ、高校、大学に入学させることを目的としたプログラムです。実際、特別な支援プログラムのおかげで、貧困家庭出身の学生の学力は上がりました。大学入学者も増えました。ですが、大学の卒業率は低く、中退者が続出したのです。
学力は上がったのに、あと何が足りなかったのか。筆者はそれは粘り強さや環境への適応能力といった、「性格の強み」だという結論に達しています。
学生たちのその後を追った結果、大学で粘れるのは成績優秀者ではなく、
単に「知能」だけではなく、何かを成し遂げるには「性格の強み」=「非認知スキル」も必要だということは、経済学者、教育者、心理学者、神経科学者などの様々な分野の研究者が提唱しています。
成功に必要な「性格の強み」
筆者は本書で「非認知スキル」という言葉をあまり使っていません。心理学者、経済学者によって使われる言葉や定義も違いますし、非認知能力という言葉には様々な意味が含まれているため使いにくい言葉なのかもしれません。
知能以外に必要な能力として、筆者は「性格の強み」という言葉を使っています。
では「よりよい人生のために性格を変えよう!」といわれるとちょっとびっくりしてしまいますよね。実際に、成功に必要な【性格・性質】を厳選して成績表の形に落とし込み、運用している学校がアメリカにはあるそうです。「性格の通知表」ですね。実際に教育現場に取り入れるところが流石です。
この「性格の通知表」には賛否両論あったようですが、その是非はともかくとして、何かを達成するために必要な<性格の強み>とは以下のようなものだと言います。
<性格の強み>
- やり抜く力(グリッド)
- 自制心
- 意欲(モチベーション)
- 社会的知性
- 感謝の気持ち
- オプティミズム
- 好奇心
「やりぬく力」はもちろんですね。何かを成し遂げるには諦めない心が必要です。「自制心」とは我慢すること。結果が出るまで待てることです。「モチベーション」はやる気ですね。やる気を維持するのは難しいことです。見返りなく努力することができる勤勉性も大切な要素です。「感謝の気持ち」。「オプティミズム」、楽観的思考。そして「好奇心」です。
日本の大学と違って、アメリカの大学を卒業するのは難しいと言います。遊びたい欲求を抑え勉強したり、テストの点が悪くてもすぐに立ち直り、わからないところは教授に質問しヘルプを求めることができる生徒。そうした気質が必要だと言います。
それがわかったところで、さらに難しいのはそれを教育現場にどう落とし込むのか、というところです。裕福な家庭の子であれば、家庭で獲得できる気質である点にも注意が必要です。こうした<性格の強み>をもった子どもたちを育てようとする教育者たちの多いことに感銘を受けました。
良い師をみつける
少し変わった内容だな、と感じたのが「第3章 考える力」です。ここでは、チェスを教える教師の指導に焦点を当てています。チェスは優秀な子どもが賢さを競うゲーム、のようなイメージなのでしょうか。では、決して優秀ではない子どもたちがチェスの試合に勝ち続けることができたら?著者は優秀ではない子どもたちにチェスを教え、団体戦で多くの勝利に導いたとある女性教師を取材しています。
この女性教師のお話はとても楽しく、また興味深く読むことができました。子どもが幼い頃は、目一杯の愛情をかけて愛着形成をするべきでしょう。でも小学生になり、中学生になるまでの間に、時には叱り、激励し、どう考えれば良かったのかを本人に問うことも必要となってきます。自分を導いてくれる先生、才能を引き延ばしてくれる先生に出会える機会はそうないのではないでしょうか。
前に読んだトニー・ワグナー著『未来のイノベーターはどう育つのか』にも書いてありましたが、「良い師」に出会うことはとても大切なことだと感じました。
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まとめ
著者は大学を中退しているそうです。理由はやりたいことが見つかったから、ということなのだと思います。大学を中退することが必ずしも悪いことではない、というのが面白い帰結でした。
専門書の部類で難しい本でしたが、ポジティブ心理学や脳科学、教育の経済学などをわかりやすく提示してくれ、私が様々に読んできた育児本に縦に一本線を通してくれた本でした。最新の教育理論を知りたい方はぜひ。
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