『「学力」の経済学』中室牧子著を読んだ感想、レビュー。科学エビデンスに基づく子育て

学力の経済学

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今回読んだ本は中室牧子著『学力の経済学』です。教育経済学の視点から、子育て・学力を考えることができる一冊となっています。

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著者について

著者は中室牧子さんで、教育経済学の専門家です。日本銀行や世界銀行での実務経験を経て、2013年から慶應義塾大学総合政策学部准教授に就任しています。

教育経済学という学問を私は初めて知りました。教育を経済学的視点から分析する学問だそうです。とある教育方針なり、教育プログラムなり、政策なりに効果があるのか科学的に分析していますので、説得力があります。

ご褒美制度にデメリットはある?

勉強したらお小遣いをあげる、スポーツで1番だったら外食に連れて行ってあげる。子育てをしていると、子どもにしてほしい行動をご褒美で誘導することがありますよね。健全なご褒美と思われるケースももちろんあるでしょうし、少々やりすぎなご褒美だな、と感じるときもあるでしょう。

お菓子

筆者は、子どもにご褒美を与えることに【条件付きでなら賛成】の立場です。過去に行われた実験結果から、ご褒美を与えることで子どものパフォーマンスが上がることが証明されています。

ただし、ご褒美を使うにあたり、その制度設計にはいくつかの注意事項があるといいます。

アウトプットではなくインプットにご褒美をあげる。

「テストで点をとったら〜」ではなく、「本を読んだらご褒美(お小遣いなど)をあげるよ」、とした方が子どもの学力が上がったそうです。

また、お金ではなくトロフィーなど、頑張った証がもらえることでも同様に効果があるそうです。

ご褒美制度の是非については私自身、別記事で考察したことがあります。私が本書を読んで気になったのは「ご褒美制度を使うことで子どもが本来もっている「やりたい」という気持ち<内的モチベーション>を邪魔しないか?」「交換条件で動く子ども、ご褒美をくれないならやらないよ、という子になってしないか?」ということでした。本書は経済学的視点から効果を見た場合の結果であり、心理学的視点から考察された本ではないという点には少し注意が必要かもしれません。

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アイキャッチご褒美

 

著者によれば、ご褒美は内的モチベーションを邪魔しないそうです。また、お小遣いをもらうなどした子どもはもらったお金を計画的に貯蓄したり、大切に使ったりしていたそうです。

一方で、著者の「ご褒美は正しく使えば問題とはならない」という言葉が、私は重く感じました。

親にとって、「ご褒美を正しく使う」ことは意外と難しいのではないでしょうか。「ご褒美がないとやらないからご褒美は必要かもしれない/ご褒美ばかり要求するようになってしまったからご褒美はやめたい」の間を、親は行ったり来たりして日々悩んでしまいます。実際に私のまわりでも、「勉強をしたら〇円」「お手伝いをしたら〇円」などのご褒美制がうまく機能しなかった、もうお金が必要なくなったらやってくれなくなった、という声もあります。

子どもは「よく頑張ったね」という言葉だったり、特別に頑張った証としてメダルをつくってあげたり、外食したりすることで気持ちが満たされることもあります。ご褒美には効果があることを認識しつつも、子どもの成長や様子を見ながら、親もご褒美を調整できると良いですね。

「学力」と同様に大切な「非認知能力」

ちょうど先日読んだポール・タフ著『成功する子 失敗する子』とも内容が重なるのですが、人生の成功には学力だけでなく「非認知能力」が大切であると言います。「非認知能力」は意欲、忍耐力、自制心、社会的適性など学力では測れない能力のことを指します。

人生の成功に必要な要素とは何なのか、海外の実験結果から答えを導き出していく過程はとても興味深く読むことができました。ぜひ一読してみてほしいです。

走る

著者は非認知能力を以下のように定義しています。

学歴、年収、雇用などの面でその後の人生の成功に長期にわたる因果効果をもつもの。
教育やトレーニングによって伸ばせることが明らかになっているもの。

非認知能力についてはポール・タフ著『成功する子 失敗する子』の感想を書いた記事に詳しく書いていますので興味あればそちらもご参照ください↓

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アイキャッチ 33

 

効果測定なき日本の教育政策

最後のパートでは、筆者の現在の日本の教育政策における問題意識について書かれています。

日本では様々な子ども向け政策が実施されています。最近では少子化対策の必要性も叫ばれています。しかしながら、実施が決まった政策がどの程度の効果を生む見込みがあるのか、しっかり議論されているのかは甚だ疑問に思う方は多いのではないでしょうか。

また、政策の実施後にどの程度の成果があったのかを測定したり、内容を振り返りよりよい政策につなげることはできているのでしょうか。

本書とは離れますが、例えば最近の少子化対策にも私は疑問を感じます。先日政府は3人以上扶養に入っている子どもがいれば大学の授業料を免除としましたが、この政策によって本当に子どもが増えるのか、どうやって効果測定するのか、きちんと検証されているのか。大学生になるまで待たずとも、もっとわかりやすく子どもを産む動機付けとなる政策はなかったのかな、と考えてしまいます。

効果測定

 

日本の教育政策の問題点。

それは、まず日本では比較実験ができないことにあると言います。例えばクラスは少人数制の方が良いのか?教員の免許制度をなくし、一般の人も教鞭をとれるようになった場合に子どもの学力はどうなる?などの比較実験が行われることはほとんどないそうです。また、全国学力統一テストの結果も詳細には公表されず、データを使って分析することができないそうです。

米国では小規模に比較実験を行い、その結果をもとにプログラムを改良し、効果のある施策をより広い地域で展開していくことができています。その点、日本は平等に同じ教育を受けることが是となっており、比較群がより有利な条件で教育を受けられることに抵抗があるようです。

筆者は財政赤字の日本こそ、コストパフォーマンスの良い教育政策を優先して実施するべきだと述べています。そのために、比較実験やデータの収集がもっとしやすくなれば、という願いがあります。

私としては教育政策だけでなく、すべての政策において費用と効果の検証をしてほしいと感じましたし、そうした問題があることを初めて知り、もっと広くたくさんの人にこのことを知ってほしいと思いました。

まとめ&感想

日本での実験データがないため、アメリカでの比較実験の結果が論じられることが多いです。ですが、海外の実験結果は日本ではあまり参考にはならないのではないかと思っています。理由としては、アメリカの貧困家庭の子どもの学力を上げることを目的とした比較実験が多く、日本とは前提条件が大きく異なるからです。ではなぜ日本では比較実験をしないのか?それには日本特有の問題あることを初めて知りました。

科学が発達した現代において、その知見を政策に活かすことができていないことをとても悔しく思います。なんとか声をあげていきたいものですね。

本書は経済学的視点からみた子育てのヒントがたくさん詰まっています。ぜひ読んでみてくださいね。

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